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G-NETS Leaders Summit コミュニケ≪日本語仮訳≫

1.世界は気候危機や感染症の脅威という深刻な危機に直面している。加えて、国家間の対立の先鋭化やそれに起因するエネルギー価格の高騰等、世界が抱える問題はさらに複雑化している。
これらの課題に立ち向かい、将来にわたって公正で持続可能な社会を実現していくためには、人々の生活に密接に関わり対応の最前線に立つ都市が国家間の違いを超えて連携し、その知恵と経験を結集していくことが不可欠であり、今こそ具体的に取り組むべき時である。
誰もが取り残されることのない経済成長の達成、そして国境を越える争いや災害による被害者への支援の重要性に留意し、私たちは、都市の都市による都市のためのネットワークである G-NETS を通じて継続的に交流し、平和的で安定的な世界を希求するとともに、このコミュニケに掲げた都市として共通して取り組むべき課題について相互に知見を共有し、関係を構築するとともに、スタートアップ等多様な主体の知見も活用することで、持続可能な社会の実現に向けて重要な役割を果たしていく。

2. 2023 年2月及び3月、私たちは日本の東京で「コロナ後を見据えた公正で持続可能な社会の実現」をテーマとした国際会議 G-NETS Leaders Summit を開催し、34 都市のリーダーが3日間にわたり議論を行った。
コロナ禍からの復興は、コロナ禍以前の社会に戻るのではなく、より公正で、持続可能な社会を目指す機会ともなる。気候危機や新型コロナウイルス感染症等、世界共通の課題による社会の変化を①人々のつながり、②安全安心、③都市を取り巻く環境の3つの視点から捉え、私たちは、「包摂・公正な社会の実現」「安全安心な都市づくり」「環境問題への対応」に向けた取り組みを進めていく。

(包摂・公正な社会の実現)

3.多様性は「人」の個性を活かすとともに、新たな価値を生み出すイノベーションの原動力である。その多様性を包摂する共生社会を創り上げることは、一人ひとりが輝く未来を形作るうえで大変重要である。そのため、私たちは社会の中で脆弱な立場にいる方々に光を当て、市民の参加を得ながら、健康長寿社会、ジェンダー平等、バリアフリーの推進や、スポーツの推進、文化振興、都市間の若年世代交流、多文化共生の実現に取り組んでいく。

4.健康長寿社会の実現:
世界の総人口に占める 65 歳以上の割合は、2015 年の 8.3%から、2060 年には 17.8%ま で上昇すると見込まれており、今後高齢化が急速に進展し、グローバルなテーマとなることが想定される。一方、一部の地域では高齢化社会に向けた準備が整っていない状況にある。そのため、私たちは、あらゆる世代が健康・長寿で暮らせる社会を目指し、特に高齢者の社会参加や生活支援、教育支援、医療支援に取り組み、健康長寿社会の実現を目指していく。

5.ジェンダー平等の実現:
過去数十年で女性を取りまく環境は改善し、教育や保健の分野でジェンダー格差は縮小したものの、未だ世界で数多くの女性が社会参画や経済的地位の面で不利な状況に直面している。性別に関係なくすべての人の人権を実現するために、女性の活躍・社会進出推進と女性のエンパワーメントに取り組んでいく。

6.バリアフリーの推進:
人々の精神的・身体的な障壁を取り除き、生活しやすい環境を整えるための、都市の役割は大きく、公共施設や公共交通機関におけるバリアフリーの推進が求められる。一方、グローバル全体においてはバリアフリーの推進には地域差が見られ、一部の地域においては充分な環境が整備されていないといえる。そのため、私たちは、都市間の連携を強め、バリアフリーの推進に取り組んでいく。

7.スポーツの推進、文化振興、都市間の若年世代交流、多文化共生:
人々が精神的・身体的に健康に過ごすための、スポーツやアートなど文化振興の役割は大きく、スポーツの推進や文化振興を活性化することが求められる。特に、COVID-19を機に、市民の活動が制限され、幅広い世代の体力低下・肥満・精神衛生の悪化が深刻化している。そのため、私たちは、都市間の連携を強め、スポーツや文化の振興、都市間の若年世代交流等、多文化共生に取り組んでいく。

(環境問題への対応)

8.気候変動は、人類の未来を脅かす問題に発展しており、気候変動を食い止めるためにはゼロエミッションの実現が世界全体における最も重要な目標のひとつである。また、急激な都市化や都市の人口増大により、廃棄物や大気、水資源をめぐる環境問題は深刻化しており、人々の生活や健康、生物多様性に甚大な影響を及ぼしている。そのため、私たちは省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの利用拡大、グリーン水素の活用等によるゼロエミッションの実現、サーキュラーエコノミー等の廃棄物対策の推進、大気・河川汚染対策、都市緑化の推進、水資源の確保等に取り組んでいく。

9.ゼロエミッションの実現:
多くの都市がゼロエミッションに向け、脱炭素の推進に取り組んでいる一方、省エネルギーの推進、再生可能エネルギーへの転換やグリーン水素の活用は大幅な投資拡大や専門的な知見が必要となり、各都市苦労している状況にある。
特に、都市においては建築物からの CO2 排出削減が求められると同時に、企業やその他ステークホルダーを巻き込んだ脱炭素の推進が期待される。そのため、私たちは、建築物における省エネルギーの推進や太陽光発電の導入拡大、地中熱や蓄電池の活用、公共交通の導入やZEV や自転車の利用促進などのグリーン交通促進、エネルギーファンドの組成に関して都市間連携を進めながら、取組を推進していく。
また、グリーン水素は次世代エネルギーとして今後、脱炭素化の柱となることが期待さ れるエネルギーのひとつである。現在、水素の利用は一部の地域では進んでいるものの、多様な分野での水素利用の拡大や、グリーン水素の活用に向けた技術開発は途上にある。そのため、私たちは、都市間や都市を取り巻くステークホルダーと連携し、水素の活用拡大や技術発展に向けた取組を推進していく。

10.廃棄物対策の推進
世界全体における人口の増加が予想される中、廃棄物の増加も今後大きな課題となる ことが懸念されている。都市は企業だけでなく、市民の廃棄物に対する意識を向上させ、廃棄物対策を推進する必要がある。そのため、私たちは、都市間連携を進めながら、サーキュラーエコノミーの実現や、廃棄物の高度循環に向けた取組を推進していく。

11.大気汚染・水質汚濁対策、都市緑化の推進
人口の増加や経済や産業発展が進む中、人間の生活や経済活動による大気・河川汚染も深刻化している。都市は、企業や市民の排気ガス、汚染水などの有害物質の排出防止や適切な処理を促すために重要な役割を担っている。そのため、私たちは大気汚染・水質汚濁防止に向けた都市間連携を進めながら、取組を推進していく。
また、都市緑化は排出されたCO2 吸収や大気汚染物質浄化のソリューションのひとつとして期待されている。あわせて、都市緑化は熱吸収や冷却効果によるヒートアイランド現象の緩和、生物多様性保全、地盤の保水・排水性向上による防災強化にもつながる。都市緑化の推進のためには、都市主導での取組が不可欠であり、私たちは都市間連携を活用し、都市緑化の促進に取り組んでいく。

12.水資源の確保と有効活用:
水資源は地球にある資源として、人々の生活を支えるうえで欠かせないものである。一方、一部の地域では十分な上下水道技術が導入されておらず、安心・安全な水にアクセスできない状況にある。また、上述したサーキュラーエコノミーの観点においても、水再生による貴重な水資源の管理が必要となる。そのため、私たちは、全世界での上下水 道技術の発展やインフラ整備に向け、都市間連携を強化しながら、取組を推進していく。

(安全・安心な都市づくり)

13.安全・安心な都市を創りあげていくためには、人々の命をも脅かす、世界中で多発する豪雨や干ばつなどの気象災害に備え、適切に対処すると同時に、的確な感染症対策、人々の安定した生活に欠かせないインフラや食料を確保する必要がある。そのため、私たちは気候危機により激甚化する自然災害への適応等、より強靭な都市づくり、エネルギーや食料の安定確保、コロナや未知のウイルスによるパンデミック対策の強化の実現に取り組んでいく。

14.気候危機により激甚化する自然災害への適応等、より強靭な都市づくり:
昨今、気候危機により自然災害は激甚化しており、人々の生活や経済に大きな打撃を与えている。自然災害やその他災害が発生したときの都市の役割は大きく、災害に対してレジリエンスな都市づくりが必要となる。そのため、私たちは、都市間連携を活用し、長期的な計画や予測に基づいた防災インフラ整備や災害時の対策強化、デジタルの活用をすることで、気候変動の緩和はもちろん、気候変動へ適応したより強靭な都市づくりに取り組んでいく。

15.エネルギー、食料の安定確保:
ロシア・ウクライナ情勢等を背景にエネルギー需給が世界的に逼迫するとともに食料の 供給不足や価格高騰が発生しており、日常生活や社会活動に大きな影響を及ぼしている。そのため、私たちは、省エネルギーの推進や再生可能エネルギーなど発電手法の多様化、蓄電池の活用等エネルギーの安定確保、価格高騰対策等食料の安定確保についても知見を共有して取り組んでいく。

16.パンデミック対策の強化:
2020 年以降世界中で流行した新型コロナウイルス(COVID-19)は、人々の生活や経済に大きな打撃を与えた。今後も新たなウイルスの流行が危惧される中、ワクチン接種や市民の行動制限、経済支援などパンデミック予防および発生時の対策を行う都市の役割は大きい。私たちは都市間連携を活用し、パンデミックの予防も含めた対策強化に取り組んでいく。

17.トルコ南東部を震源とする地震に対する支援
令和 5 年 2 月 6 日、トルコ南東部において発生した大規模地震により、多数の死傷者が出るなど、甚大な被害が発生したことに、私たち都市は心からの哀悼の意を表する。被害に遭われたトルコ共和国及びシリア・アラブ共和国における被災地の方々が、この 困難を乗り越えるにあたり、必要な支援を迅速に提供すべく尽力していく。

18.最後に、私たちは、市民の生活を守り向上させるため、都市間連携を広げ、より「包摂・公正な社会の実現」「安全安心な都市づくり」「環境問題への対応」が可能となる社会の実現を目指し、上記の事項を東京宣言 2023 として採択する。G-NETS を活用した都市が抱える問題の解決が地球規模の課題解決にも寄与し、持続可能な社会が実現することを期待する。