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SusHi Tech Tokyo 2024 シティ・リーダーズ プログラム コミュニケ≪日本語仮訳≫

【前文】

1. 世界の情勢は刻々と変化しているが、近年、そのスピードはますます速くなっている。気候変動による未曽有の気象災害や国家間の対立等による不安定な国際情勢など、世界が抱える問題はより一層複雑化している。また、GX・DXが進展すると共に、スタートアップが世界の変革と成長を牽引するなど、産業構造も転換期を迎えている。さらに、コロナ禍を経て都市に求められる機能や人々の価値観は変化しており、都市は今、複雑に絡み合うグローバルな動きの只中にいる。 そのような中、「21 世紀は都市の時代」と言われるように、気候危機や自然災害、未知の感染症への備えや多様性の尊重など、課題への対応の最前線に立つ都市が、国際情勢が緊迫する今こそ連携し、その知恵と経験を結集しながら、具体的な行動を起こしていかなければならない。 都市の都市による都市のための国際ネットワークを通じて継続的に交流し、将来の明るい展望を希求するとともに、このコミュニケに掲げる共通して取り組むべき課題に対応するため、都市間の協力関係をさらに深めていく。さらに、スタートアップ等多様な主体の知見や高い技術力を活用することで、課題解決への取組を加速し、都市の持続可能性を追求する。

2. 2024 年5月、日本の東京で開催された「より良い未来に向けた、イノベーションによる、公正で持続可能な社会の実現」をテーマとした国際会議、SusHi Tech Tokyo 2024 シティ・リーダーズ プログラムにおいて、45都市のリーダーが3日間にわたり議論を行った。 2023 年に開催された首長級会議以降、そこで設置が合意されたワーキンググループの活動を通じ、個別の重点課題について都市間でベストプラクティスが共有された。今後、都市課題の解決にスタートアップの技術を活用するプロジェクトや知見・ノウハウの共有を目的とした都市間の技術的交流を実施していく。こうした実践的な都市間連携による取組を実施することで、公正で持続可能な社会を実現していく。 【包摂・公正な社会の実現】

3. 全ての人々が包摂される公正な社会の重要性は、持続可能な社会の実現を目指す都市にとって基盤となる共通の理念である。その考えのもと、より公平で持続可能な共生社会の実現に向け、市民の参加を得ながら、ウェルビーイングの促進、女性活躍の推進、健康長寿社会の実現、バリアフリーの推進、文化・スポーツの振興を実施する。

4. ウェルビーイングの促進 誰ひとりとして孤立しない包摂的な社会の形成において、社会的に弱い立場に立つ人々を支えるセーフティーネットの構築が求められる。誰もが経済的な豊かさを享受できる社会の実現を目指す。 そのため、障がい者や経済的困窮者、性的マイノリティなどに対する支援、安心して暮らせる住まいの提供、青少年・子供へのより良質な教育の提供や社会参画の促進と同時に、社会福祉の拡充・強化を行うことで、市民が直面する多様な課題に対応し、人々の不安に寄り添う社会を実現する。このように、経済的、身体的、社会的な課題など、様々な困難に立ち向かう人々に対する支援を社会インフラに組み込むことで都市のウェルビーイングを促進する。

5. 女性活躍の推進 世界全体の労働人口における女性の割合は2022年の時点で4割と半分に満たず、女性の経済的自立や政治参画の促進に向けた支援が必要不可欠である。 具体的には、職業訓練等を通した女性の社会進出支援と経済的自立の促進、女性リーダー育成、女性の政治参画状況の改善を推進していく。また、女性の安全と安心を確保するための環境づくりについても取り組んでいく。

6. 健康長寿社会の実現 あらゆる世代が健康・長寿で暮らせる社会を目指していく必要がある。また、国連は世界が持続可能な開発目標を達成するためには、高齢化に対処しなければならないとしている。高齢化に伴い、高齢労働者割合が増加傾向にあることから、高齢者がより活躍できる労働環境の整備が求められている。 具体的には、全ての高齢者が生きがいを感じられる社会の実現や健康的な長寿社会形成に向け、高齢者に対する生活支援のサービス・インフラの拡充やヘルスケアの確保に取り組む。また、労働市場環境の改善、定年後のリスキリング・再就職ができる環境の整備などの社会的・経済的な包摂の実現に向けた取組を推進していく。

7. バリアフリーの推進 バリアフリーの推進は、全ての人々が快適に社会生活を営む上で必要不可欠である。人々の精神的・身体的な障壁を取り除き、誰もが都市インフラや施設サービスを利用できるようにすることで、包摂的かつ公正な社会の実現に寄与する。 また、誰もが公共施設や公共交通機関にアクセスできるまちづくりを一層促進し、ハード・ソフト両面から環境整備を図る。

8. 文化・スポーツの振興 文化やスポーツは、心を豊かにし、健康の増進や共生社会の実現に寄与する。 そのため、文化やスポーツを通じた市民交流を促進し、地域文化活動やスポーツ活動の機会を創出するなど、誰もが文化・スポーツを楽しむことのできる環境づくりを推進していく。 パラスポーツの振興などを通じて多様な人々との交流を促進し、多様性を尊重しながら全ての人が輝くインクルーシブな都市の実現を目指す。 【安全・安心な都市づくり】

9. 世界の気象災害は過去50年間で5倍に増加するなど、近年、地球規模の気候変動に伴い、風水害等の気象災害は激甚化・頻発化する傾向にある。また、大規模地震などの自然災害は、いつ起こるとも知れない。今年に入ってからでも、1月1日には日本の能登半島で、4月3日には台湾東部で、多数の死傷者を生じさせる地震が発生した。被害にあわれた方に私たち都市は心からお見舞いを申し上げる。活発な都市活動を行うために、あらゆる災害に対して、強靭な都市を創り上げていくことが求められている。また、全ての人々が安心して都市生活を営むためには、安全で快適に暮らせる地域コミュニティや、必要十分な飲料水・食料・エネルギーが不可欠である。 このため、強靭な都市づくり、人や地域のつながりの強化、飲料水等の安定確保を通じて、誰もが安全・安心に暮らせる都市の実現を目指していく。

10. 強靭な都市づくり 昨今、気候危機により気象災害は激甚化しており、また、大規模地震などの自然災害も各地で発生している。こうした災害が人々の生活や経済に大きな打撃を与えていることから、災害に対してレジリエントな都市づくりが必要となる。 防災技術を活用しながら、災害リスクマッピングや防災計画の策定、市民への災害情報及び避難情報の提供を通じて市民の防災意識をより高める。また、防災インフラ整備・更新、防災物資の整備、先端技術の活用による災害時の電力や通信の確保、データの確実な保全に取り組む。こうしたソフト・ハード両面の取組を通じて安全・安心な都市の実現を目指す。

11. 人や地域のつながりの強化 市民が安心して暮らすには、多様性を尊重して互いの個性を認めながら支えあう環境づくりや、防犯による安全・安心の向上が不可欠である。 そのため、いざというときに助け合いの基盤となる地域コミュニティを活性化し、また誰もが集うことができる場所を創出する。また多様化する犯罪に対しては、各都市の知見や先端技術を用いた地域への情報発信とともに、地域コミュニティとの協働や防犯ボランティアの機運醸成により、安心して暮らせる社会の実現を目指す。

12. 飲料水・食料・エネルギーの安定確保 飲料水・食料・エネルギーは、市民生活において必要不可欠であり、その安定的な供給の確保は都市の重要な役割である。 都市間連携を強化しながら、飲料水等の日常的な安定確保に向けて、先端技術を活用した水インフラの整備とともに、災害発生に備えた施設の耐震化などに取り組み、持続可能な水道システムの構築を推進していく。また、世界的な人口増加等による食料需要の増大、気候変動による生産減少や国際的な物流遅延等に対する食料の安定確保を目指す。さらに、省エネルギーの推進やエネルギー自給率を高める再生可能エネルギーの導入拡大、蓄電池の活用等エネルギーの安定確保について都市間で知見を共有しながら連携して取り組んでいく。 【環境施策の推進】

13. 「地球沸騰化」ともいわれる現代の急速な地球環境の変化は、市民の安全・安心な都市生活を脅かす要因である災害リスクを助長させている。次世代の市民も安心して生活を営める都市を構築するためには、気候変動への対応が不可欠である。また、都市化や人口増加などの要因によって自然環境が悪化している地域もあり、環境保護・水資源の保全が喫緊の課題となっている。 こうした状況に対し、ゼロエミッションの推進、サーキュラーエコノミーへの移行促進、自然環境の保護、自然と調和した都市づくりを通じて、持続可能な未来を築いていく。

14. ゼロエミッションの推進 気候変動は全ての都市に共通する重大な環境課題であり、持続可能な都市の形成にはゼロエミッションの推進が不可欠である。太陽光、風力や水素など、よりクリーンな次世代エネルギーへの転換を進めるにあたり、様々なセクター及び産業全体の脱炭素化の推進、再生可能エネルギー等の実装を加速させる。 また、ZEVなどによる温室効果ガスの排出削減の推進、太陽光発電などの建築物の再生可能エネルギーの活用に取り組んでいく。加えて、自転車の利用など環境にやさしいエコな生活への転換を市民に促すなど、多岐にわたる脱炭素に資する取組を積み重ね、ゼロエミッション都市の実現を目指す。 また、グリーン水素は次世代エネルギーとして今後、脱炭素化の柱となることが期待されるエネルギーのひとつである。現在、水素の利用は一部の地域では進んでいるものの、多様な分野での水素利用の拡大や、グリーン水素の活用に向けた技術開発は途上にある。そのため、都市間や都市を取り巻くステークホルダーと連携し、水素の活用拡大や技術発展に向けた取組を推進していく。

15. サーキュラーエコノミーへの移行促進 現在、世界全体の廃棄物の三分の一は適切に管理・処理されていない。サーキュラーエコノミーは、環境に対する負荷を軽減し、気候変動や生態系への悪影響を抑制することに寄与するとともに、自然環境の保護に資する。市民とともに協働し、廃棄物の削減や廃棄物処理のより適切な対応の推進、リサイクルの促進に取り組み、サーキュラーエコノミーへの移行を促進していく。

16. 自然環境の保護  自然環境を保護することは、より持続可能な都市を築く上で不可欠である。人口増加や都市化の進行に伴う大気及び水質汚染の悪化、廃棄物の投棄などを起因とする海洋汚染により、生物多様性が失われることは、市民の健康を脅かすだけでなく、自然環境の生態系の崩壊につながる。 排気ガス、産業排水などによる有害物質の排出を抑制するなど大気汚染・水質汚染対策に取り組む。同時に、より適切に下水処理を可能にする都市インフラの整備を進める。そして、都市、地方、島しょ部を問わずあらゆる地域で野生生物の生息・生育環境を確保し、生物多様性の保全に取り組む。

17. 自然と調和した都市づくり  緑は CO2 吸収源であり地球温暖化防止に寄与することに加え、豊かな水源を育むとともに、保水機能を有し都市の防災力向上にもつながる。 近年、都市機能と自然環境の調和が重要視される中、森林等の緑の保全、まちづくりにあわせた緑の創出や、緑の持つ多様な機能を活かしたグリーンインフラの導入を推進していく。市民をはじめ様々な主体との連携・協力によりこれらの取組を推進し、自然と調和した持続可能な都市を実現する。

【結び】

18. 最後に、市民の生活を守り向上させることを目的に、都市間連携を広げ、「包摂・公正な社会の実現」「安全・安心な都市づくり」「環境施策の推進」のため、上記の事項を「SusHi Tech Tokyo 2024 シティ・リーダーズ プログラム」コミュニケとして採択する。参加都市が抱える問題の解決が地球規模の課題の解決にも寄与し、公正で持続可能な社会の実現を希求する。