2025/05/07
東京消防庁がソウルとシンガポールを訪問:AIを用いた先進技術の知見共有

G-NETS参加都市の実務担当者による共同プロジェクトの一環として、東京消防庁は2025年2月にソウル市特別市消防災難本部及びシンガポール民間防衛庁を視察し、東京消防庁として将来の消防行政に導入可能なシステムの確認を行いました。
主な訪問先
【2025年2月17日】
ソウル特別市災難本部
麻浦消防署、緊急管理センター及び消防学校を視察。
麻浦消防署
市中に配置された防犯カメラ映像を災害時に活用できることや、3D表示対応の大型地図モニターで建物構造等を可視化できること等、災害運用体制が強力に整備されています。
【2025年2月18日】
ソウル緊急管理センター
ソウル特別市の緊急通報を受報し、災害を総括統制する指令所。緊急通報を受け、管内にある25の消防署への部隊運用を実施しています。AIの導入を積極的に検討し、緊急通報が大量に入電した際に、通報が滞留しないようにすることを目的に、通報内容と緊急度を判断するAI(119番通報コールボット)を開発し、今後の本格運用に向けて検証中です。
消防学校
VRを用いた消防用設備操作訓練装置や、緊急走行操縦訓練シミュレーターで大型車両の運転操作体験ができる設備を有する等、実践的な教育環境が整備されています。
【2025年2月20日】
シンガポール民間防衛庁
デジタル戦略及び救急部との知見共有、そして指令室、消防署及び民間防衛アカデミーを視察。
救急部
シンガポール国民全員がマイナンバーカードを保有し、さらに指紋を登録している社会的背景があることから、OMNII(救急医療ネットワーク情報統合)システムによって、救急隊のタブレットを活用して傷病者の情報(既往歴等)をリアルタイムで病院と共有する効率的な仕組みが整備されています。救急隊は出場が多いことから、現場で活用するOMNII用タブレットで事務処理が完結する仕組みとなっています。
オペレーションセンター(指令室)
シンガポール全域に展開されたSCDFの災害対応リソースを管理し、全オペレーションを統括する「神経中枢」として、災害等のインシデントをリアルタイムで監視し、積極的な支援を行うなど、東京と同様の指令室機能を有しています。増加する救急需要に対して、電話医療トリアージにより、緊急度に応じた対応を行っており、今後は受付員のヒューマンエラーを減らすサポート的な役割としてAIの活用を想定しています。
【2025年2月21日】
民間防衛アカデミー
データ分析に基づく人材のパフォーマンス向上を目的とした施設で、新人消防官はアカデミーに入所後、体力測定を実施し、科学的に体力を分析しています。また、消防活動時の身体への影響については、視線の動き、脳波、レスポンスタイムなど、多岐に渡る分析を実施。
東京消防庁として今回の視察で得た、AI等を用いた先進技術やシステム導入後の課題を、今後導入するシステムの仕様へ反映させることで活用していきます。また、今回両本部と先進技術の他に救急活動の知見も共有することができ実りある視察となりました。