2025/09/05
11都市の実務担当者が東京都へ:都の交通分野の再生エネルギーや省エネルギー施策を視察

2025年7月31日から8月1日の2日間、G-NETSワーキンググループ共同プロジェクトの一環として、東京都の主催で交通分野の再生エネルギーや省エネルギー施策をテーマとした視察が開催されました。視察には世界11都市の実務担当者が参加し、1日目は都営大江戸線やさくらトラム、2日目はゆりかもめや水素バスなどを見学し、視察後には活発な意見交換が行われました。
主な視察先
【2025年7月31日】
・都庁前駅(都営大江戸線)
東京都庁では交通局職員が、1日あたり約323万人(2023年度統計)が利用する地下鉄・路面電車・バスにおける省エネルギー化の取組について説明を行いました。質疑応答では運営戦略、課題、今後の実施計画などの質問が参加者から飛び交い、積極的な議論が行われました。
都営大江戸線都庁前駅では、12言語に対応し、訪日外国人や聴覚障害者に配慮した多言語対応の窓口向けユニバーサルコミュニケーションシステム「VoiceBiz® UCDisplay®」を見学。透明ディスプレイ越しに英語やフランス語などで職員と対話を体験した参加者は、翻訳の速さと精度に感心していました。
その後、視察参加者は都庁前駅から飯田橋駅まで大江戸線に乗車。車内に設置されている「子育て応援スペース」を視察しました。ベビーカー用の広いスペースや保護者向けの優先席が設けられた専用エリアの取組は2021年から都営地下鉄全線で導入されており、わかりやすい表示や使いやすいデザインが工夫されています。
・東京さくらトラム(都電荒川線)
都電荒川線の早稲田駅で視察団は、1913年から運行する東京唯一の路面電車で、歴史的価値と持続可能性を備えた東京さくらトラムを視察。現在は100%再生可能エネルギーを導入しており、多摩川上流の水力発電による地産地消のクリーンエネルギーで運行されています。また、2023年から「スマート東京」戦略の一環でスマートフォンで使える「都電1日乗車券」が導入されています。これはスタートアップと協業し、位置情報を活用し、利用者の利用区間を把握できる先端的施策の一つです。
・荒川車両基地・都電おもいで広場
さくらトラム下車後、荒川車両基地で、留置線やトラバーサー、営業所内の指令ゾーンなどの設備を見学。旧型車両を展示する都電おもいで広場では、公共交通の歴史を伝える取組が紹介されました。
【2025年8月1日】
・ゆりかもめ本社とゆりかもめ車両基地
視察団は燃料電池バスに乗車しゆりかもめ本社へ。有明車両基地やゆりかもめの車両を点検する検修棟内部などを視察しました。2025年に開業30周年を迎えたゆりかもめは、無人運転技術を世界的に牽引してきた公共交通機関で、全線が再生可能エネルギー由来の電力100%で運行されています。
ゆりかもめ本社見学の後は、実際にゆりかもめに乗車し、有明駅から豊洲駅まで約3kmを往復。ゆりかもめの職員から、自動運転技術の仕組み、線路の構造、乗客数などの説明を受けました。
・有明営業所~岩谷コスモ水素ステーション
東京都交通局は2017年に日本初となる定期運行の燃料電池バスを導入し、2024年4月時点で75台を運行しています。有明自動車営業所では日本初の営業所内水素ステーションが2025年4月に稼働を開始。岩谷産業が運営する同ステーションで、水素燃料供給のプロセスを見学し、インフラ化への課題や安全対策、今後の拡張計画を聞きました。
・意見交換会
視察終了後、東京都庁で参加者による意見交換会が行われました。「交通システムにおける多言語対応やバリアフリー施策が素晴らしかった」といった声が出るなど活発な議論となりました。今回の視察を通じた知見共有は、環境負荷の少ない都市型モビリティの実現に向けて、G-NETS参加都市間の今後の連携にも役立てられます。
参加都市
オークランド、ブリュッセル、ブエノスアイレス、カタルーニャ、ヘルシンキ、イスタンブール、新北、リガ、サントドミンゴ、タリン、タルトゥ(アルファベット順)