2026/02/24
東京都がオランダ、ドイツ3都市を訪問:「まちづくり・住まい」「緑と水」「都市の強靭化」「ゼロエミッション」の先進的な取組を調査
2025年9月7日から14日まで、G-NETSワーキンググループ共同プロジェクトの一環として、「2050東京戦略 ~東京 もっとよくなる~ 」に掲げる施策のさらなる強化を目的に、東京都の実務担当者がアムステルダム市、ロッテルダム市、ベルリン市を訪問しました。視察では、「まちづくり・住まい」「緑と水」「都市の強靭化」「ゼロエミッション」の4つのテーマを軸に、各都市が進める先進的な施策や事例について現地を調査しました。
視察の背景
「まちづくり・住まい」「緑と水」「都市の強靭化」「ゼロエミッション」は、「2050東京戦略 ~東京 もっとよくなる~ 」が掲げる28の戦略の一部です。人口構造の変化や気候変動への対応、エネルギー転換など世界の大都市が抱える共通の課題に対して、訪問先の3都市は先進的な取組をしています。
まちづくり・住まい
【アムステルダム市】
移民等により人口が年間約1万人増加しているアムステルダム市は、住宅不足による価格の高騰への対策として「40-40-20ルール」を導入しています。これは、新規住宅開発において40%を価格管理された住宅、40%を中間所得層向け、20%を市場価格(高所得者向け)とする仕組みで、アフォーダブル住宅の供給を促進しています。
【ベルリン市】
ベルリン市も人口増加による住宅価格高騰への対策に取り組んでいます。ヴァッサーシュタット・スパンダウ地区の再開発では、住宅供給公社により2027年までに約9,000戸の住居が建設され、そのうち50%が低所得者向け住宅として利用されます。また、2020年に閉鎖された旧ベルリン・テーゲル空港跡地(ベルリンTXL)の再開発では、2026年以降に5,000世帯1万人が居住できる木造の集合住宅団地が建設され、地熱活用や屋上緑化を取り入れた都市再生のモデルとしても注目されています。
緑と水
訪問した3都市は、いずれも都市内でグリーンインフラ等を活用して雨水を貯留・循環させる仕組みを構築しています。
【アムステルダム市】
アムステルダム市は車道を緑地に転用し、雨水の貯留による水循環の改善を促進しています。また、屋上緑化の方針を策定し、水の管理、空気の浄化、暑さ対策を目的に、屋上やバルコニーの緑化を推進。太陽光発電との共存も図っています。
左:国際的にも有名な超高層複合ビル、バレータワーズの屋上緑化とバルコニー緑化の様子 右:緑地転換された車道やバレータワーズなどがある再開発地区ズイダス地区©Wolf-photography/shutterstock
【ロッテルダム市】
ロッテルダム市は、廃線となったオランダ初の電気鉄道の高架を再生した屋上公園ホーフボーゲンパークや、隣接するゾーホー地区のレインガーデンに雨水を集めて浄化し、再利用を行う循環システムを備えています。両施設では、小動物の生息地として専用の出入り口も設置されており、生物多様性の保護や地域コミュニティが集う場所としての役割も担っています。
【ベルリン市】
ベルリン市は、地下水位が高く、市内の飲料水供給は地下水に依存しています。土壌汚染がある地区も多く、雨水を下水に流さない取組が約30年前から行われています。2018年にベルリン雨水庁が設立され、スポンジシティ化が進められました。ルンメルブルク地区では、屋根で雨水を蒸発させ、残りは地上部の貯水型グリーンインフラに貯水することで、敷地外に雨水を流出させない住宅も建設されています。雨水の蒸発で気化熱が奪われ、蒸発冷却効果があるとも考えられています。
都市の強靭化
【ロッテルダム市】
国土の約1/4が海面下にあるオランダの中でも、特にロッテルダム市は市内の約85%が海抜0m以下であり、高潮や豪雨への対策が必須。1953年の高潮被害を機に、ロッテルダム港の入り口にはマエスラント可動堰をはじめとする大規模防潮インフラが整備されています。
また、都市部では調節池として機能する水の広場ほか市内各所で、日常利用と一時的な雨水貯留機能を両立させた公共空間づくりが進められています。ロッテルダム北部の再開発地区ゾーホー地区にあるグリーンインフラ、レインガーデンゾーホーは、庭がスポンジ的な役割を果たし、地域の洪水を防ぐ機能が期待されています。
【ベルリン市】
近年ゲリラ豪雨が増えているというベルリン市のスポンジシティの取組は、「緑と水」だけでなく、都市の強靭化にもつながる重要施策として位置づけられています。雨水を下水に流さず、敷地内で処理回収・浄化・蒸発をする仕組みは集中豪雨時の洪水リスクの低減にも寄与しています。
ゼロエミッション
【アムステルダム市】
オランダは、国としても洋上風力発電や水素エネルギーの活用を推進しており、再生可能エネルギーを基盤とした都市・産業構造への転換が進められています。アムステルダム市で再生可能エネルギーを活用した水上住宅や循環型社会に向けた実験地区は、その象徴的な事例です。
【ベルリン市】
ベルリン市では、2023年の太陽光発電の設置義務化やプラグインソーラーの導入支援などにより、市民参加型の再生可能エネルギー転換施策が進められています。プラグインソーラーは、工事不要で家庭のコンセントに挿すだけで使用可能な小型の太陽光発電システムで、ドイツ全土でも導入が急増しています。
また、ベルリンTXLのような大規模なエリアの再開発では、太陽光だけではなく地熱の活用や木造の集合住宅団地の建設、資源循環型の材料の活用を再開発計画の戦略の一つとして位置づけています。
今回の視察を通じ、訪問した3都市が「まちづくり・住まい」「緑と水」「都市の強靭化」「ゼロエミッション」を一体的に捉え、気候変動対策と生活の質の向上を同時に実現している姿が明らかになりました。これらの先進施策の視察で得られた知見は、東京都の政策への反映検討やG-NETSを通じた都市間ネットワークでの共有に役立てられる予定です。