2026/03/24
東京都がロサンゼルスを訪問:自動運転等最先端の交通手段の実装事例を視察
G-NETS参加都市の実務担当者による共同プロジェクトの一環として、東京都都市整備局都市基盤部の職員が2026年1月にロサンゼルス市を訪問しました。2年後に迫るロサンゼルス2028オリンピック競技大会(LA2028)に向け、整備が進む市内のさまざまなエリアを巡りながら、最新の自動運転タクシーサービスの試乗やバス高速輸送システム(BRT)の視察、同市交通局と自動運転導入に関する意見交換などが行われました。
主な訪問先
【2026年1月14~15日】
ユニオン駅
地下鉄やAmtrak(長距離列車)、空港連絡バス「LAX FlyAway®」など複数の公共交通機関が接続する、アメリカ西部最大の鉄道旅客ターミナル駅から視察がスタートしました。ユニオン駅は、休憩スペースを備えた広場を中心に鉄道やバスターミナルへと円滑に移動できる動線が確保されており、初めて訪れる人にも分かりやすい構造となっています。
【2026年1月15日】
サンタモニカ周辺
LA2028に向け、ピアブリッジの架け替え工事を実施中(2027年12月完了予定)のサンタモニカ・ピアへ、自動運転タクシー「Waymo」で移動。太平洋へと突き出す桟橋は、アメリカを横断する国道「ルート66」の西端としても知られています。
Waymo社との意見交換
自動運転車によるタクシーサービス「Waymo」は、日本で自動運転の実証実験を行う際に課題となりやすい「路上駐車の回避」や「複雑な交差点での左折(日本の右折に相当)」にも対応し、ロサンゼルスでは観光客を中心に日常の移動手段として利用されています。
配車はスマートフォンのアプリから行い、車内モニターやアプリを通じて空調やリクライニング、音楽などの設定も操作できます。さらに、車両が対応困難な状況に直面した場合には、遠隔から人が指示を出す「リモートアシスタンス」体制を整え、1人で数十台を管理できる仕組みが構築されています。
Waymo社では、最先端技術の現状や東京都内で2025年に行われた実証実験の成果、東京での実装に向けた課題について幅広く議論が行われました。特に、日本特有の「歩行者との距離が近い」交通環境の課題が論点となりました。東京はタクシー需要が極めて高い都市であることから、現在は日本交通と連携し、日本の道路状況に即した歩行者との距離感を学習させる取り組みを進めているWaymo社。また、同社はトヨタ自動車とのパートナーシップ協定により、日本での車両提供などで連携が検討されていることが紹介されました。
ハリウッド/ハイランド駅
ハリウッド/ハイランド駅周辺では、駅前の道路空間の再編計画が進められています。観光地としても知られるハリウッド・ウォーク・オブ・フェイム周辺では、車道を縮小することで歩道が拡幅され、自転車レーンが整備されるそうです。
【2026年1月16日】
ロサンゼルス市交通局
ロサンゼルス市交通局では、交通施策の管理者、交通規制・政策の担当者、地理情報システムやデータ分析の専門家で、法執行や都市計画にどう役立てるかを研究する新モビリティのプランニング担当者、LA2028に向けた交通整備担当者らと意見交換が行われました。
同交通局は、MDS(Mobility Data Specification)を開発し、電動キックボード、シェアサイクル、自動運転車両などの事業を行う民間企業と自治体が、走行位置や駐車情報等のデータを相互に共有し、都市交通を管理できるようにしています。自動運転において道路工事などの想定が難しい環境の変化であっても、事前に走行禁止エリアとして情報が提供されるため、自動運転車両のスムーズな走行が可能になります。東京都での導入の可能性については、今後さらなるヒアリングや検討が進められる予定です。
ほかに、自動運転の施策については課題もいくつかあげられました。なかでも、高齢者の受容性の低さはロサンゼルスと東京都に共通する課題であることが認識されました。
バス高速輸送システム(BRT)
最後の視察先であるBRTを訪問しました。24時間運行を行っている全長18メートルの電気連結バスで、専用レーンを走行しています。LA2028に向け、2つある路線のうちGラインの大規模改良が計画されています。 バス優先信号の高度化、立体交差(橋梁)の建設、高架駅の新設により、移動時間の短縮と安全性の向上が期待されています。
2026年6月開業予定の自動無人列車システム「Airport People Mover(APM)」(©Los Angeles World Airports and LAX Integrated Express Solutions)
ロサンゼルスでの視察や関係者との意見交換を通じて、自動運転技術の都市への実装には、技術開発だけでなく、データ管理の仕組みや規制環境、市民の受容性といった社会的条件が重要であることが改めて確認されました。特に、MDSといった都市交通データの管理手法は、今後の都市交通政策を考える上で重要な示唆を与えるものです。
また、先進的な都市においても、行政間の連携や市民理解の醸成など、実装に向けた共通の課題があることが共有されました。自動運転技術の社会実装は、多くの都市にとって共通の政策課題となりつつあります。
こうした課題に対応するため、都市間で都市政策に関する知見や技術を共有することの重要性が高まっています。G-NETSは、こうした都市間の知見共有と技術交流を通じて、持続可能でレジリエントな都市づくりを促進する都市ネットワークです。