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2026/09/30

世界が注目した東京都の備えとは?G-NETSがつなぐ災害対策と廃棄物処理の知見

第二消防方面本部消防救助機動部隊で披露された訓練

2026年7月30日から31日の2日間、G-NETSワーキンググループの一環として、世界15都市から20名の実務担当者が東京を訪れ、災害対策と廃棄物処理の現場を2日間にわたって視察しました。

参加者が一様に注目したのは、東京が備えに投じる予算の規模と、それが着実に使われる実行力、そして頻繁に重ねられる訓練。過密・地震・水害・高層・離島という複合リスクに東京がどう備えているかに、参加者は自らの街の課題を重ねました。

① 世界15都市が注目した東京都の防災力

各都市を悩ませる防災課題

参加都市の多くが、それぞれの規模と地理で課題を抱えています。洪水時に住民が避難に応じない、消防のヘリコプターが1機しかないなど、視察の各所で、参加者は自都市の悩みを率直に口にしました。

首都直下地震の被害半減に向けて東京都が進める対策

東京都は、2030年までに首都直下地震による死者と建物被害を半減させる目標を掲げています。力を入れるのは耐震化と不燃化。この10年で、住宅の耐震化率は81.2%から92.0%へ、整備地域の不燃化率は58.4%から64.0%へと上昇しています。無電柱化も、都市機能が集中するセンター・コア・エリアや重要施設を連絡する第一次緊急輸送道路等で重点的に進められています。

初動を支えるのは、都自身の即応体制。都庁周辺の東京都災害対策職員住宅に住む約300名が、災害が起きればただちに参集します。「地震直後は携帯電話網が脆弱になるが、どう連絡を取り合うのか」という参加者の質問には、防災行政無線などが備えられていることが示されました。発災からおよそ2時間後には知事を本部長とする災害対策本部の第1回会議が開かれ、大規模災害の場合は最終的に数万人規模の職員で対応します。

東京都の災害対応の現場を15都市が視察

視察初日、参加者はまず東京消防庁総合指令室を訪れました。ここでは年間121万件、1日平均3,334件、約26秒に1回緊急通報が入電します。近年通報が増える背景を問われると、職員は人口増と高齢化を挙げました。英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語の三者通話にも対応し、外国語話者からの通報にも対応。併設の救急相談センターは、救急車を呼ぶべきか病院を受診すべきか迷う住民のための窓口で、医師・看護師・相談員が24時間365日対応し、2025年には約50万3千件の電話を受け付けました。リガの参加者は、この仕組みを「電話に応じる相談員が、限りある人的資源を適切に振り分ける最初の重要な段階になる」と評価しました。

東京消防庁本部で説明を受ける参加者たち

続いて訪れた東京消防庁航空隊(江東航空センター)は「空の消防」を担う部隊。大型・中型ヘリコプター各4機、計8機が運航し、上空からの情報収集活動、消火活動、山岳・水難等の救助活動、内陸及び伊豆諸島での救急活動等の多種多様な任務にあたっています。ダーバンの参加者からは夜間の出動についての質問が上がり、夜間は危険を伴うため山岳救助等の一部災害は運航が制限されるなどのヘリコプターの運用について共有されました。

江東航空センターではヘリコプターや消火器材などが紹介された

第二消防方面本部消防救助機動部隊は、重機や高度な資器材を活かし、通常の消防力では対応が難しい災害に立ち向かっています。参加者は、瓦礫の下の要救助者を電磁波で探す人命探査装置に強い関心を示し、また毎分8,000リットルの消火用水を送水する遠距離大量送水車の送水能力には驚きの声が上がりました。視察では、実際の救助を想定したドリル(訓練)も披露され、参加者はその様子に熱心に見入っていました。

消防救助機動部隊に配備されている高度な救助資器材についての説明が行われた

簡易救護所にもなる大型の特殊救急車を見学

消防救助機動部隊の訓練に見入る参加者たち

総務局総合防災部では、東京都の災害対策が包括的に紹介された

視察2日目には、総務局総合防災部の東京都防災センターを訪れました。即応体制の中枢として、リアルタイムの情報共有を通じて災害対応の意思決定を支えています。避難地域の情報をどう統合するのかというマニラの問いには、区市町村がDIS(災害情報システム)に入力する情報を一括管理する仕組みが示されました。SNS上のデマをAIで分析するツールにも質問が相次ぎました。都庁の各部署から専門スタッフが集められて対応する仕組みに、参加者たちは高い関心を示していました。

② 1,000万人の暮らしを支える廃棄物処理

廃棄物処理をめぐる各都市の現実

参加都市の事情はさまざまです。分別が行われていない街、埋立地で火災が起きて多くの住民が困った街、処分場でごみを拾って生計を立てる人がいて事故で命が失われた街など、どの都市も廃棄物処理については切実な課題を抱えています。

環境に配慮した東京都の埋立処分場

東京都は、23区の約1,000万人が日々出すごみを、焼却や破砕などの中間処理を経て、東京湾の埋立処分場で最終処分しています。埋立にあたっては、3メートルの廃棄物層を50センチメートルの土で覆う「サンドイッチ工法」を採用しており、最終的には高さ30メートルまで積み上げられます。この工法は、廃棄物の飛散防止や臭気(悪臭)の拡散防止、害虫の発生防止、火災の発生防止など、周辺環境に配慮した環境対策として実施されています。また、ごみから出るメタンガスを発電に有効活用し、処分場で必要な電力の一部を賄っています。

参加者からは、サンドイッチ工法で積み上げられた埋立地の悪臭の少なさへの感嘆の声も

メタンガスを有効活用する発電施設の見学も行われた

15都市が見た東京の処分場の安全管理と資源活用

参加者が訪れたのは、東京湾の中央防波堤外側埋立処分場および新海面処分場。サンドイッチ工法や排水処理の実際に加え、ごみから出火した際の消火活動のデモンストレーションも視察しました。かつての処分場が公園や運動場に生まれ変わってきたように、この土地もいつか都民に開かれる場所になるかもしれません。ダバオの参加者は、安全に管理されメタンガスを電力に変える東京の処分場を「帰国したら市長に伝えたい」と語りました。

処分場内での火災発生を想定した消火訓練

意見交換会で見えた、各都市の関心と共通課題

視察最終日の意見交換会では、同じ東京の取り組みでも、都市によって印象に残る点が大きく異なりました。多くの都市が口を揃えたのは、予算とその使われ方。ナイロビからの参加者は「東京都は、予算を設定し、それを守り、予算どおりに実施するという意味で、私たちよりはるかに先を行っています」と語りました。関心の向く先は街の性格を映し、洪水に悩むダバオは、住民が避難に応じない現実を「日本には規律がある」と対比させます。多くの都市が、東京都防災センターと、定期的に重ねる実働・図上の訓練に高い関心を示していました。

課題も率直に共有されました。ブランプトンは、弱い立場の人々や移民コミュニティへ防災情報をどう届けるかという多言語化の問題を提起。都の担当者は、災害のたびに少しずつ改善してきた歩みを語り、「まだ改善点があるので、あなたたちからも学びたい」と応じました。地域のレジリエンスをどう高めるかという話題では、都の担当者が日本の町内会の仕組みを紹介しつつ、高層マンションや移住者の増加でつながりが弱まるなか、防災アプリや全戸配布の冊子で個人に直接情報を届ける取り組みを挙げました。

視察最終日には東京都庁で意見交換会が実施された

東京での学びを次の連携へ—広がる都市間交流

G-NETSは、都市が抱える共通の課題を共有し解決策を探るために、東京都が2022年に立ち上げたネットワーク。今回の対話は、その場かぎりで終わりません。ダーバンの参加者は、各部門に防災の専任担当者を置き訓練を重ねる東京の仕組みに関心を寄せ、自国の他の人々にも手法を共有してほしいと希望しました。自分が伝えるだけでは賛同を得にくいが、東京自身が語れば多くの都市が学べる——そうした次の一歩が、この視察から生まれました。

予算、避難行動、防災意識の醸成など、浮かび上がった課題の多くは、程度の差こそあれ多くの都市に共通していました。サポパンが投げかけた「避難したがらない住民への対応」も、予算規模を問わず各都市が抱える課題として議論を呼びました。一方通行の見学ではなく、都市どうしが知見を交わし合う——それこそが、このネットワークの意義を象徴していました。

参加都市

ブランプトン・ブエノスアイレス・カリ・ダバオ・ドバイ・ダーバン・マニラ・ナイロビ・リガ・サンサルバドル・ソウル・タルトゥ・ティナドゥー・ウェリントン・サポパン(アルファベット順)

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