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2025/12/08

10都市の実務担当者が東京都へ:東京グリーンビズの取組や都市部における緑化施設を視察

麻布台ヒルズ

麻布台ヒルズ

2025年11月6日から7日の2日間、G-NETSワーキンググループ共同プロジェクトの一環として、東京都における都市緑化をテーマとした視察が開催され、世界10都市の実務担当者が参加しました。1日目はおおはし里の杜と麻布台ヒルズ、2日目は都立明治公園と海の森公園などを見学し、視察後には意見交換が行われました。

主な視察先

【2025年11月6日】

・東京都庁

東京都が2023年に開始した、自然と調和した持続可能な都市を目指す、100年先を見据えた緑のプロジェクト「東京グリーンビズ」について、担当職員による解説が行われました。東京の総面積の約4割を占める森林の手入れ、都内の緑地をマッピングしたWebサイト「東京グリーンビズマップ」の公開、民間との協業による屋上庭園や公園の整備のほか、豪雨や猛暑など自然災害への対応に自然が有する機能を活用する「グリーンインフラ」の整備などが紹介されました。
環境局職員からは、2017年に東京都が設けた在来種植栽登録制度「江戸のみどり登録緑地」に関する解説も行われました。1,000 ㎡以上の敷地を有する民間建築物などの敷地内の緑地を対象に、在来種を積極的に植栽し、生物多様性の保全に取り組んでいる緑地を東京都が登録・公表する制度であり、特に生きものの生育環境への配慮に優れた緑地は「優良緑地」として登録し、東京の緑の質の向上や効果的なPRにつなげる取組です。今回の視察先の一つであるおおはし里の杜(大橋換気所)など計17カ所(2025年9月時点)が登録されています。

・おおはし里の杜

首都高速道路大橋換気所の屋上に位置する、おおはし里の杜(首都高速道路株式会社提供)

首都高速道路大橋換気所の屋上に位置する、おおはし里の杜(首都高速道路株式会社提供)

目黒川周辺の原風景を再現した「おおはし里の杜」内にある水田

目黒川周辺の原風景を再現した「おおはし里の杜」内にある水田

冬の間も田に水を溜めておく「冬水たんぼ」農法が生物多様性の回復に貢献

冬の間も田に水を溜めておく「冬水たんぼ」農法が生物多様性の回復に貢献

2011年、首都高速道路株式会社によって、首都高速3号渋谷線と中央環状線が交わる大橋ジャンクションの大橋換気所屋上に整備された広さ約900㎡の自然再生緑地です。一般開放イベントや地域の子どもたちの稲作体験、環境教育に活用されています。
内部には昭和初期の目黒川周辺の原風景をモデルに水田や雨水を循環させた川が設置され、約460種の動植物が確認されており、視察時にも放流された生きものだけでなく、チョウやハチ、アオサギなどが見られました。

・麻布台ヒルズ

港区に2023年に開業した麻布台ヒルズ(森ビル提供写真)

港区に2023年に開業した麻布台ヒルズ(森ビル提供写真)

商業施設、文化施設、学校、医療機関などが集まる複合施設です。35年以上の期間を要した大規模な再開発プロジェクトで、高低差のある地形を生かし、超高層タワーを配することで緑地を確保するという発想により敷地全体に約24,000平方メートルもの緑地空間を実現。街には約320種の植物が生息し、都心における生態系の保全や来街者が自然に触れるイベントやワークショップを開催しています。視察では中央広場と低層部屋上の果樹園、菜園を見学したほか、約6,000平方メートルもの中央広場を含む緑地を散策しました。

約6,000平方メートルの中央広場や低層部屋上の果樹園

約6,000平方メートルの中央広場や低層部屋上の果樹園

【2025年11月7日】

・都立明治公園

東京都が初めて「Park-PFI(公募設置管理制度)」を導入し、2023年に開園した都立明治公園へ。Tokyo Legacy Parksと共同で整備・運営を行う約16,000㎡の敷地内に、カフェや植樹スペース、芝生広場、レインガーデン、そして障がいの有無や年齢にかかわらず誰でも使うことができるインクルーシブ遊具を備えた広場が設置されています。

国立競技場に隣接する公園には5つの棟にカフェ、アウトドアショップ等が入

国立競技場に隣接する公園には5つの棟にカフェ、アウトドアショップ等が入居

インクルーシブ広場は遊具を移動させ、イベントスペース利用も可能

インクルーシブ広場は遊具を移動させ、イベントスペース利用も可能

100年続く森をコンセプトとした「誇りの森」エリアの7,500平方メートルの敷地には多様な在来種を含む650本の樹が植樹されており、視察参加者からも驚きの声があがりました。公園はヒートアイランド緩和や都市型豪雨に対するグリーンインフラの役割も担っています。

・海の森公園

視察参加者は、海の森公園へ。1987年までごみの埋立が行われていた中央防波堤内側埋立地に整備された約60万平方メートルの敷地に、東京都と都民、団体、企業の協働により潮風に強い常緑樹など約24万本の樹木が植えられ、その後の公園整備を経て2025年3月に開園した公園です。環境に関するワークショップやスポーツ他多様なイベントが開かれ、利用者が自然環境や資源循環を学び楽しめる場所となっています。
公園内にある海の森ビジターセンターでは、港湾局の職員が1,230万トンのごみの埋め立て地を多様な生き物が生息する森へ生まれ変わらせるプロジェクトの内容や公園の成り立ちを解説しながら、参加者を案内しました。

海の森ビジターセンター内に設置されている地層のレプリカの標本を解説に聞き入る参加者

海の森ビジターセンター内に設置されている地層のレプリカの標本を解説に聞き入る参加者

海の森公園や中央防波堤内側埋立地の歴史を伝える展示パネル

海の森公園や中央防波堤内側埋立地の歴史を伝える展示パネル

生物調査や公園のガイド活動を行う海の森子供レンジャーがつくった「海の森リゾートホテル(インセクトホテル)」

生物調査や公園のガイド活動を行う海の森子供レンジャーがつくった「海の森リゾートホテル(インセクトホテル)」

バッタを手にのせ、生物多様性について説明する指定管理者

バッタを手にのせ、生物多様性について説明する指定管理者

植樹完了後も都民や企業と協働で森を育てる活動が行われている

植樹完了後も都民や企業と協働で森を育てる活動が行われている

海の森について学び、生きもの調査や森を育てる活動を行う「海の森子供レンジャー」によって設置されたビオトープや広場を守る潮風に強い常緑樹が植栽された「風の森」を散策しながら、参加者は都内では貴重な生物を観察し、公園内の生物多様性や環境保全について職員に積極的に質問をしていました。

・意見交換会

視察終了後に都庁で行われた意見交換会では、「東京グリーンビズ」の多岐にわたる取組とその成果に対する感想や行政と民間の強固な協力体制に関する質問のほか、市民の理解促進の方法などについて活発な議論が交わされました。今回の都市緑化の取組に関する視察を通じた知見共有は、G-NETS参加都市間の今後の連携にも役立てられます。

参加都市

バンコク、ベルリン、ブランプトン、ブリュッセル、ジャカルタ、新北、リガ、タルトゥ、ウェリントン、サポパン(アルファベット順)

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